HRP-4Cに夢中

産総研の開発した人型ロボット、HRP-4Cをはじめて見たときには、あえて、人に似せる必要はないんじゃないかな、なんて感想を持ったのですが、だって表情に多少の不自然さを感じちゃったものですから。けれど、一晩たって、印象はすっかり変わってしまいました。動画を見て、Impress Robot Watchの記事を読んで、もうなんだか夢中といった感じです。といったわけで、Blogにも書いちゃったりして、いやほんと、なにか未来を垣間見るようで、わくわくするのですよ。

人型ロボットについてはずっと前から興味を持っていて、職場で仲良くしてくださってる人と、ロボットの将来についてしゃべったりしてきたわけですが、そうした時に具体的に思い描いていたことよりも、現実の方がずっと歩みがはやいと感じられるのですから、ただただすごい。しかし、自分の生きているうちには実現するかなと思っていたことが、下手すりゃ数年、十数年といった単位で実現するかも知れない、そんな気持ちにさえなれるのですから、産総研の仕事は実に素晴しいものであったというほかありません。

さて、Blogにも書いてますけど、ヒューマノイドに搭載するのは人工知能でなく、人工無脳でいいのではないかという話。人工知能の研究がどれだけ進んでいるか、ちょっとわからないので、もしかしたら的外れなこというかも知れませんが、私は正直なところ、機械に知性や感情を持たせるのは難しいと思っています。どうしてもどこか足りない、なにかが足りない、そんなものにとどまるのではないか。だったら、不完全な人工知能を載せるより、よくできた人工無脳の方がずっと効果的なのではないか、などと思っています。

何年か前に、人工無脳にちょっと興味を持っていろいろ調べていた時に、チャットなどでちょっと言葉を交す程度なら、機械の返す反応であるとは思わせない、それくらいに進んだものがあることを知りました。人工無脳を人と勘違いした人は、その先もあれが人工無脳だったなんて思いもしないだろう。受け取り手が、そこに存在しない人あるいは知性や感情、心を感じ取ってしまったのなら、その人にとって、それは人となんら変わらないんですね。そう思えば、ヒューマノイドに搭載されるのは優れた人工無脳で充分。そこに心があるとかどうだとかは、受け取り手である私がなんとかすればいいのだ。そう思うようになったのでした。

私がはじめて人工無脳に触れたのは、HyperCardのスタックで実現されたものだったのですが、対話している途中で、人工無脳が知らない単語が出れば、それはなに? と聞いてくる。それに対して説明する。その繰り返しで語彙を増やしていって、会話もだんだん複雑に、微妙に意味不明になっていく。そうしたところが面白かったです。そういえば、PlayStationのゲーム『どこでもいっしょ』もそんな感じでしたね。ヒューマノイドにおいても、同様でいいんじゃないでしょうか。わからないことがあれば、それはなんですか? と素朴に問い掛けさせて、その結果をサーバに送るなりして、他のヒューマノイドと共有する。そうして語彙を増やしていって、より自然と思われる発話ができるようになれば、心はこちらで勝手に付け加えます。そつなく振る舞ってくれる必要なんてないんです。私、できません。私、馬鹿だから、よくわかりません。ごめんなさい……。そうした受け答えのバリエーションで繋ぎながら、うまく騙してくれたらいいよ!

ヒューマノイドと対話する、その際に彼女の発するウィットに富んだ受け答えは、おそらくは過去に誰かが話したことなのです。けれど、それは人だってそうそう違いやしません。私は彼女というインターフェイスを通して、顔も名前も知らない誰かと、断片的な対話をするのかも知れない。けれど、それでも私にとってそれは、彼女と対話しているという体験に他ならないのです。話を聞いてくれて、適当に(いい加減にじゃなくて)相槌うってくれて、そうした相手にめぐまれない人間にとって、彼女はきっととてもいい友人になってくれると思うよ。それに私は、いけ好かないあいつと話すくらいなら壁に向かって話した方がずっとましだと考えるような人間です。だったら、きっと壁よりも彼女の方がずっと愛しやすいでしょう。

どこでもいっしょ

どこでもいっしょ

(有)椎名百貨店 1 (小学館文庫 しH 5)

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そしていつか、彼女には結局は心も、感情といえるものさえもないのだと気付いて絶望することがあるとしても、かまいやしないのです。それは、あの時同じ花を見て、美しいといった二人の心と心が、今はもうかよわないと知る時の悲しみにどう違うというのでしょう。

結局は作りごとも真実も、小さきものにはさして変わるものではないようです。

戦争と平和

戦争と平和

わからないことがあれば、それはなんですか? と素朴に問い掛けさせて、その結果をサーバに送るなりして、他のヒューマノイドと共有する。

プライバシー問題などは、今は考えない方向で。